「今、石川県でどれくらい魚が獲れとるか、過去のデータも見せてほしい」 — 能登町の漁師さんたちの一言から始まったサイト 魚相場ナビ。バラバラの形で公開される全国20市場のデータを、AIが毎朝集めて一画面に並べる。地域同士の値段比較も、過去との見比べも、これまで人手では続かなかった仕事をAIが肩代わりする。
もくじ(全 4 節・約 6 分)
01
背景・きっかけ
能登町で漁を続ける漁師さんたちから、こんな相談を受けた。
「今、石川県でどれくらい魚が獲れているのか、過去のデータも含めて見えるようにしてほしい」
日々の水揚げは肌感覚で持っている。けれど、県全体で今シーズンどう推移しているのか、去年の同じ時期と比べてどうなのかを、自分で数字を集めて並べる時間は無い。ホームページに日報は出ているが、過去分を遡って眺める形では公開されていない。
「データはどこかに公開されとるのは知っとる。けれど、バラバラに置いてあって、まとめて見ることができん」
それが、最初の困りごとだった。
実際のサイト
記事を読む前に、まず実物を見てみる
02
AIに任せた仕事
出発点は「石川県の今を見えるようにする」という、たった一つの相談だった。動かしてみると、自分自身にも「他の地域ではどうなんやろ?」という素朴な疑問が湧いた。それで対象を広げ、現在は全国20か所の市場のデータを毎朝まとめるサイト 魚相場ナビ に育っている。
このサイトでは、AIに3つの仕事を任せている。
1. 全国20か所の市場から、毎朝データを集めてくる
各地の市場や漁協は、それぞれ独自のやり方でデータを公開している。エクセル風の表で出している市場もあれば、PDFで出している市場、ホームページの中に文章で書かれている市場もある。形がバラバラで、人手で毎日まとめるのは現実的ではなかった。これを夜のうちにAIが巡回し、形を揃え、一つの場所に蓄える。人が一日仕事で集めるデータが、朝サイトを開けば既に並んでいる状態にした。
2. 「同じ魚なのに違う呼び名」をAIが揃える
漁業の現場では、地域によって同じ魚に違う呼び名がある。能登の「ガンド」は他地域では「ブリの若魚」、「ノドグロ」は「アカムツ」、「ツバス」「ハマチ」「ワラサ」はすべてブリの成長段階。これをそのまま並べると、別々の魚として集計されてしまい、全国の比較ができない。AIが地元の言い方を読み取って標準的な名前に揃えてくれるから、はじめて石川の「ノドグロ」と長崎の「アカムツ」を同じ画面で並べて見られるようになった。
3. 集まったデータを文章に整えて、毎朝届ける
ただ数字を並べるだけでは「数字の山」になってしまう。AIが「今日はこれが多かった」「先週より値上がりしている魚はこれ」「今は旬のこの魚に注目」と、その日の市況を短い文章で要約する。X(旧Twitter)にも、毎朝自動で投稿される。データを置いてあるだけでは見にきてもらえないが、文章にして届けるところまでやって、初めて使われるサイトになった。
03
代表的な使われ方
このサイトが実際にどんな場面で使われているか、代表的な3つを紹介する。
1. 「他の地域と比べて、自分のところは高いのか・安いのか」を確かめる
朝の仕入れ前、仲卸さんや鮮魚店の方が、自分の市場の値段と他地域の値段を並べて見る。「今、能登のブリは長崎より安い」のように、地元の感覚だけでは分からなかった、全国の中での自分の位置づけが、数字で見えるようになる。これが成り立つのは、AIが各地の呼び名を揃えてくれているから。
2. 気になる魚の「今と過去」を一気に遡る
「今年のブリは去年と比べて多いのか少ないのか」「この時期に旬を迎える魚は何か」を、専用のページで一目で確認できる。漁師さんの「今年は不漁な気がする」という肌感覚を、過去の数字と照らして確かめられる。バラバラの形で公開されているデータを毎日蓄積し続ける、人手では続けられない仕事を、AIが静かに済ませてくれているからこそ可能になった。
3. 「向こうから市況が届く」毎朝の通知
画面を開かなくても、X に「今日はこれが多かった、先週より値上がりしているのはこれ」という短い要約がAIから届く。通勤途中や仕入れ前の数分で、その日の傾向だけを掴める。数字の山を、人が読める文章に整えるところまでをAIが担うから、忙しい現場でも習慣として入ってくる。
今、石川県でどれくらい魚が獲れとるか、過去のデータも含めて見えるようにしてほしい。日々の水揚げは肌でわかっとる。けど、県全体で今シーズンどう推移しとるのか、去年の同じ時期と比べてどうなのかは、自分で数字を集めて並べる時間がない。データはどこかに公開されとるのは知っとる。けれど、バラバラに置いてあって、まとめて見ることができん。それを、まとめて見られるようにしてほしい。
能登町の漁師さんたち
04
成果と今後の展望
成果
直近では、能登半島の隣接エリアにあたる氷見市場のデータを追加する予定。地元の事業者からの関心が特に高い領域からまず広げる。さらに、特定の魚の値段が大きく動いた時にメールで知らせる通知機能も計画中で、仕入れや出荷判断のための情報をより早く届けられるようにする。
中長期では、集めたデータを地域の食・観光・物流の文脈で他の事業者やメディアにも開放し、ふるさと納税や旬の魚紹介と連携することで、消費者にも近づけていきたい。能登町の漁師さんたちの一言から始まったこのサイトが、能登の海の価値を全国の食卓に届ける入口になればと考えている。
実際のサイトはこちら → 魚相場ナビ(sakana-souba-navi.jp)
次に読む

事例 ・ 2026.05.16 ・ 読了 8 分
地震で半壊した築100年の古民家を、宿へ。AIと数時間やり取りして、数百万円の補助金申請書を自分で仕上げる
「現場仕事で一日が終わる。夜に机に向かって書類を書く体力は、もう残らない」— 能登半島の海沿いで、地震で半壊した築100年の古民家を宿として蘇らせている建築デザイナーの言葉だ。やりたい事業はある。補助金の制度もある。けれど、その間にある申請書類を作る時間がどうしても取れない。机に向かわなくても、**LINEで「こうしたい」と話しながら、自分の申請書を仕上げていける**仕組みをAIで組み立てた。書類を作るのはあくまで本人。AIは下書きと整理で伴走する。数時間のやり取りで、数百万円規模の補助金申請書が手元に揃った。
同じやり方が自社でも使えるか、聞いてみませんか
契約を前提としないご相談を歓迎しています。
「うちの場合はどうなるか」だけでも構いません。
